「数年連続増収増益」嘘じゃないけど注意しておくべきこと
こんばんは、つじもとです。今回は、企業・業界分析するときに注意してもらいたいことを書こうと思います。個人の意見にはなりますが、何か考えるきっかけになれば幸いです。
「数年連続増収増益」の謳い文句とその仕組み
就職活動しているときに、よく企業説明会で見たことがあります。企業の売上高や純利益を表示し、
「うちの会社は数年連続伸びてます」
とアピールしてくる光景です。数年という数字ですが、おそらく12年以内だと思います。
なぜそうだと主張するのか。簡単な話です。
リーマンショックが起こったのは、2008年の9月の話だからです。
そのため、2008年の決算にはギリギリ影響がなくても、2009年の決算ではその影響を大きく受けている企業が数多くあります。その頃から現在までの日経平均株価の変動は以下のようになっています。
現在(2020/8/25)時点の日経平均株価は、23,296.77円となっており、これはリーマンショック時の底地である7055円(2009/3/10)の3倍以上となっています。実感はなくても、企業にとっては景気はよくなっているということが見て取れますね。
事業別に見る景気との関連性
こうやって見ていると、「数年連続増収増益」という言葉の信憑性が少し下がるような印象がありますね。もちろん増収していて何も損はないですが、
思っているよりもすごいことじゃないのかもしれないと感じるのではないでしょうか。
残念ながらそういう訳ではありません。また、企業が行なっている事業によっても影響の大きさに差があります。
今回は簡単に、事業の種類を以下の2つに分けて見てみようと思います。
- BtoB事業 (企業間取引)
- BtoC事業 (企業が個人に対して商品・サービスを提供する取引)
そして、景気による影響を比較するために、大手SIerである大塚商会の有価証券報告書を用いようと思います。
大塚商会の事業別の売上高の変化
大塚商会の事業は大きく以下の2つです。
- システムインテグレーション事業 (BtoB)
- サービス&サポート事業 (BtoB,BtoC)
そして、それぞれの売上高は2009年12月の有価証券報告書と2019年12月の有価証券報告書ではこうなっています。
2008年のリーマンショック以降だと、BtoB事業であるシステムインテグレーション事業の売上が減少していますね。その反面、サービス&サポート事業には大きな影響がありません。
また、2018年から2019年にかけて、大きく売上高を伸ばしています。しかし、具体的に各事業ごとの売上高の数値が分かりません...。仕方ないので、売上原価から売上高の増収・減収を推測します。
システムインテグレーション事業の売上原価は大幅に増えています。そして、サポート&サポート事業は変化があまりないようです。売上原価の増減により、売上高の増減は、2008年と2009年の比較、及び過去のデータからも推測できます。これらから
- システムインテグレーション事業は増収
- サポート&サポート事業は若干の増収か
と推測できます。
これで何がわかるのか
散々企業のデータを見てきましたが、結局何が言いたいのかというとこういうことです。
- BtoB事業は景気による影響を受けやすい傾向にある
- BtoC事業は景気による影響を受けにくい傾向にある
BtoB事業でも特に、システムインテグレーション事業のような「顧客から依頼を受けて、それを受注する」モデルのものは、他社の影響を受けやすいため、景気が良くないと、依頼そのものが来ません。金がかかることをできる状況にないからです。
その反面、自社サービスのようなBtoC事業などは景気の影響を受けにくいです。
つまり、
今調子がいい企業も景気が大幅に変動したとき、それを維持できる訳ではない
ということです。
目先の数字だけでなく、ビジネスモデルや景気による変動も視野に
新型コロナウイルスの影響で、しばらく続くであろうと言われていた「インバウンド需要」が大幅に減少しました。このように、今後どのようなことが起き、それが経済に影響を与えるのかが想像できないということがよく分かったと思います。だからこそ、志望する企業のビジネスモデルや行なっている事業内容を理解し、その上で判断する必要があります。「数年連続増収増益」のような謳い文句に踊らされず、企業を見極め、良い就職活動を送ってください。